心の指針ルーレット |
【愛と追憶の中で】
とうしてこれほどまでに、
「愛」にこだわったのだろう。
若き日に多くの人々に愛されたわけではない。
むしろ愛を求めても求めても、
充たされぬ思いで一杯だった。
自分が認められたくて、認められたくて、
空に向かって両手を伸ばしても、
両脚はズブズブと沼の中に
沈んでゆく感じさえあった。
自分の天命を受け止めるのに、
六年近い歳月がかかった。
頭の中だけは高速回転しているのに、
悟りへの道の歩みは、
亀の如くのろかった。
修行の森に分け入ってからも、
すべてがご利益のように
与えられたわけではない。
協力者が現われるのには時間がかかった。
心の絆を強く結んで、
共に北極星を目指していた道の友とも、
別れなければならない時が何度あったことか。
今、すべてが光の河の中を、
流れ去ってゆく。
何も執着はするまい。
赤い小さなバラの花束を、
小川の岸辺から流す。
ささやかな追憶の涙は、
決して誰にも見られないようにしよう。
(心の指針125)
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