心の指針ルーレット



【逃げるな】

青春時代、私はささいなことで悩んだ。
テストの点が一つでも悪いと苦しみ、
他人の評価に傷つき、
周りからの尊敬が得られないなら、
偽悪家ぶったり、
毒舌をふるったりして、
他人から嫌われる方へと自己実現もした。

確かに傷つきやすかった。
だから他人から傷つけられる前に、
自分で自己否定してみせているのだ。
まるで電気磁石のように、
周囲から、砂鉄ならぬ劣等感を引き寄せていた。
その電流のもとが、自己憐憫、
つまり、「自分がかわいそう」と思う心だった。

自己憐憫して、
他人からの同情を期待しても、
問題は何も解決しなかった。
置き去りにされて、
孤独地獄や阿修羅界にいるだけだった。

「逃げるな」という声がした。
他人からの同情を乞う心、
自己嫌悪、劣等感と闘えと。
自分との闘いだ。
他人との競争じゃない、と。

私はその声に従った。
道は、ゆっくりと上り坂に向かっていった。

(心の指針56)

ルーレット回転